立夏1 2社目の就職面接1

脊髄反射 新米社会人

脊髄反射でものごとを決めてはいけない

雲の上の存在の経理部長

ひとつめの入社面接が不首尾に終わったことを悲観する間もなく、2日後には、2社目の面接に挑んだ。

関西のとあるターミナル駅から徒歩圏にそのオフィスは存在した。

1社目の失敗で懲りた私は、面接前日はリラックスして眠りに付けるように心がけた。

そのおかげか、今度は前日にぐっすりとまではいかないにしても、平均的な睡眠をとることができた。

心を落ち着かせて面接に挑んだ。相手は、経理部長の肩書を持つ名刺を差し出してきた。

「元木です。よろしく。」

社会人経験が皆無の私からすれば、経理部長という肩書を持った人は、それだけで、雲の上の存在のように思えた。

経理部長の口からは、信頼に足る(ように当時の私には聞こえた)言葉が発せられた。

「うちは、郵便局がテナントとして入っている信用のある会社だからね。」

華やかそうに見えた会社

その企業は、ターミナル駅からほど近くに自社ビルを構える会社だった。たしかに、駅からそのオフィスまで歩いていく途中に、建設途中の郵便局があった。

電話で応対してくれた女性社員の道案内も、工事中の郵便局をまずは目指してください、というものだった。

オフィスに到着後、そうそうに面接が始まり、私の経歴や不動産関連の資格に関する簡単な確認があった後、件の経理部長による事業内容説明が始まった。

「うちは、郵便局がテナントとして入っている信用のある会社だからね。このビルも自社ビルで、不動産管理を主体にしています。都内に、〇〇棟のオフィスビル、マンション、店舗物件を持っています。」

「大家として、不動産を賃貸しているだけでなく、いろいろな業態の店舗も経営しているんです。首都圏の〇〇と〇〇に、ブディックホテルを経営していて、ハワイにもホテルを持っていましたが、現在は撤退しています。」

「その他、2件のカラオケレストランを経営していたり、1件の居酒屋を経営していたり、さらに、2件の定食屋を経営しています。」

「いずれの業態も、まさに店舗開発中で、軌道に乗れば、フランチャイズ展開を予定しています。」

「それから、企業向けのファイナンス子会社も持っています。」

確証バイアス

当時は、まだ初心うぶで、ブディックホテル という言葉がラブホテルの婉曲表現のひとつとして使用されることがあるとは知らなかった。

そもそも、それまでの人生で、ブデックホテルという言葉すら知らなかったが。

不動産業に金融業、多店舗展開による飲食チェーンの経営、それにホテル事業。確かに、それぞれの業種の中では、とても素晴らしい経営者が、とても素晴らしい企業を実際問題として経営なされていらっしゃる。

例えばで大企業の名前をここで拝借するのは大変恐縮なのだが、某P社の創業者の某M翁が素晴らしい経営者で、某P社という素晴らしい経営をなされている会社が存在するんだという事実を私は知っている。

そして、例えば某P社が電気機器業界にあるからといって、電気機器業界自体が素晴らしい、そして電気機器事業を営んでいる企業ならばどんな企業でも素晴らしい企業である、という思い込みと同種の過ちを犯してしまった。

いわゆる「確証バイアス」「認知バイアス」というやつで、個人の先入観に基づいて相手を観察し、自分に都合のいい情報だけを集めて、それを材料に自己の先入観を補強しようとする心理的傾向、を持ってしまう、という何とも奇妙な思い込みに憑りつかれてしまったのだ。

経験値が絶対的に不足している中、誰のアドバイスも受けず、性急に事を決めてしまう悪い癖は、既にこの頃から顕在化していたのだ。

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