業績改善プログラム継続
トラウマになっている資格勉強
もう一度、私に課せられた業績改善プログラム(PIP)の内容を反芻してみよう。
- そろばん
- 簿記3級取得(企業会計原則の暗記含む)
- 経済統計の記録と分析結果の報告
そろばんの練習とその効果については、下記の通りだ。
ここでは、簿記3級取得の学習を始めたことに触れる。
経理部長が勧られるまま、オフィスから最寄りの駅ビル内にあった書店で簿記3級の対策本を購入した。
資格勉強自体にはアレルギーはなかったが、最近までの地獄の苦しみから、資格勉強生活に戻ることへの抵抗は非常に強いものがあった。
しかし、今回は経理部長という伴奏者が傍についてくれている。
経理部長も、私のトラウマについては、入社時面接で説明済みなので、気持ちよく、私が一歩前に踏み出せるように、心を尽くして説明をしてくれた。
簿記の勉強を始める
いの一番に、貸借バランスについて学んだ。今でも、仕訳帳から総勘定元帳への転記で、科目と金額がひっくり返ることには、正直、納得がいっていない。
しかし、理由を深く考えずとも、そのやり方だけをマスターしてしまえば、実務では十分であることを経理部長から学ぶことができた。
これまで、日本語の字句に拘って生きてきた時間が長いため、どうしても、「借方」と「貸方」という言葉そのものの意味を脳内で考えてしまう。
売上は既に自社のものなのに、どうして、貸方に記入するんだろう?
費用は自社にある現金で支払っているのに、どうして、借方に記入するんだろう?
借りていることと同義の買掛金で購入したものなら「借方」にある、といっても正しいが、現金仕入と掛仕入と、同列に扱っていいものなのだろうか?
一事が万事、こんな具合だった。
「借方」「貸方」というのは、単なる記号で、その言葉自体には、会計学の歴史上、深い意味があることは、後に専門書で知ったが、当時の自分には不要な知識だった。
自分には、目の前の支払伝票の意味するところ、相手科目をわざわざ書かなくても、それは現金だということが、ようやく理解できてうれしかった。
(ちなみに、学習開始後、最初の試験日に無事簿記3級は取得することができた)
経済統計の記録
経理マンとしての足腰を鍛える基礎となったのは簿記の学習のおかげであることは間違いない。
多くの日本人が英語を学ぶ際、まず5文型からマスターするように、経理マンとして仕事をするならば、簿記の知識が必須だと思う。
しかし、その後の私の経理マン人生を決めたのは、簿記の知識ではなくて、むしろ、経理部長から出された3つ目の課題にあるといえる。
経理部長からは、日経平均終値、円ドルレート、長期プライムレート、短期プライムレート等、経済指標を毎日手書きでノートに採ることを宿題とされた。
そんなもの、新聞やスマホ・PC画面をのぞけばいつでも確認することができる。手書きでノートに写す必要性がどこにあるというのだろうか?
結論から言う。人間の脳はデジタルにまだ順応していない。多くの人間の脳はまだアナログで機能している。だから、手書きでノートに写す、という所作が一番脳に記憶としてとどまりやすい。
経理部長は週に何度か、実務の必要に駆られて、私に上記のデータを質問してきた。きっと、自分で暗記しているにもかからずだ。
そういうやりとりのおかげで、数字アレルギーから解放され、徐々にだが、私にも数字の意味が分かるようになってきた。
分析結果の報告
合わせて、経理部長は自分宛に証券会社から送られてくる各種レポート(マクロ経済分析、企業分析など)をすべて、私まで転送してくれるようになった。
私はそれらのレポートをただ読むだけではなく、読んだ後、その分析結果を経理部長に毎日報告するミッションを言い渡された。
頭でっかち。
私は当時、よく経理部長からそう指摘されていた。経理実務が手につかないくせに、世の中のしくみについて理屈ばかりこねていたからだ。
今では、理論と実践を上手く折り合わせることを最上位の仕事として、取り組むことを心がけている。
そうした姿勢を持てるようにしてくれたのは、経理部長の指導の賜物だった。
実務のお手手が追い付かず、頭でっかちな私が自信も喪失して、見るからに、やる気を失っている表情をしていたのは、手に取るように分かっていたからだ。
社会人経験もない、ましてや、大学で会計はおろか、経済やファイナンスも全く勉強していない新人から、証券会社から送られてくるレポートの分析がまともにできるわけがない。
実務のための簿記とそろばん、モチベーション維持のためのレポート分析。
絶妙な経理部長の業績改善プログラムのおかげで、私は、見る見る間に自信を取り戻し、ようやく、並みの経理マンに近づくこととなる。
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