立夏1 初めての就職面接2

スーツ 新米社会人

とりあえず形から入る

入社面接に相応しい服装から入る

それまで、スーツを着たことがないわけではない。

大学在籍中にバイトをしており、そこでは、客の手前、社会人然として振舞う必要があった。

両親に買ってもらったグレーのスーツ。大学の入学式用のやつだ。たった一着では着回しができない、ということで、あと2着買うことにした。

いっぱしに、シングルとか、ダブルとかこだわって、いろいろなタイプを買った。

しかし、今から思えば、目に鮮やかな赤茶色にスーツなぞ、普通の社会人は着るのだろうか?

当時の私は、痛い色のスーツでも、着ているだけで、何か大人に成長した気がしていた。

そうだ! 正社員の面接に着るスーツを新調しよう。そして、当時住んでいたアパートの近くのスーパーマーケットに行き、紳士服売り場に向かった。

当時の私は、いつも食料品を買うスーパーマーケットの2階で衣料販売をしていることを知っていた。

得意満面の笑みで、売り場にいる女性の販売員にこう言った。

「すみません。入社面接用のスーツを探しているのですが。」

中途採用面接に相応しいスーツとは?

当時は、紳士服専門店や百貨店で、スーツを作るほうが一般的である常識も知らなかった。いや、何をもって一般的かと問うても仕方あるまい。

人それぞれの考え方だから。私は、ただ、スーツ売り場をそこしか知らなかったにすぎないのだ。

女性の店員さんも、ちょっと見た目が変わっているけれど、お客様には違いないから、それ相応の対応をしてくれた。

でも、多分、店員さんの許容範囲を超えたお願いをしたのだろう、ということは、今の自分なら理解することができる。

「すみません。私は、大学を卒業した後、ブランクがあります。ですので、社会人経験がないのですが、中途採用での入社面接をしたいと考えています。大変お手数なのですが、そうした中途採用に相応しいスーツを選んでもらえないでしょうか?」

ちょっと困った顔をした店員さん。年の頃は40代半ばといった感じ。世間知らずの自分に、驚きはしたものの、しっかりと接客をしてくれた。

2、3言のやり取りで、2着のスーツとそれに合うワイシャツとネクタイをコーディネートしてもらった。

詰めの甘さは今に始まったことではない

詰めが甘いとは本当にこのことだ。スーツとそれに合うワイシャツとネクタイ。そこまでは気が回った。

しかし、靴は合成皮革のつま先が傷で痛んでいるもの。カバンは学生時代に使用していた、これも合成皮革のノーブランドのアタッシュケースのままだ。

こだわるところが、常識から遠いところにある。

今でも、常識が身に着いてはいないけれど、当時は、常識を知らないどころではない、自分が世の中の基準だと思い込んでいた。

本当に無知とは恐ろしいものだ。

私は、今まで、仕事を最後まで完全にやりきったことはない。そういう中途半端で投げ出すことを平気でしてきた。その片鱗がこのスーツ選びにも表れている。

詰めが甘く、徹底してやるべきことを卒なくやることができない。形にばかりこだわり、本質的なことを追究できていないのだ。

服装にこだわるなら、靴やカバンにまで気を配るべきだった。

ニートの自分に生活費として、大切な貯えから仕送りしてくれていた両親には、本当、申し訳ないお金の使い方だった。

そして何度でもいう。本質的なことに目を配らずに、形式に囚われ、やるにしても詰めが甘い。

こうした私の本質が、今から思えば、この就職活動にはすでに表れていたのだ。

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